Classici giapponesi con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 508.883 caratteri · 1017 schermate
四
幻想の心臓の中に、忽然、赤裸の男性を見出した彼女は、死ぬかと思うほどな愕きに打たれた。悲しくて悲しくてならなかった。
けれど、その恐怖と慟哭の中に、彼女はまだ、ふしぎな矛盾が残っていることを気づかない。
もし先刻の烈しい圧迫が、武蔵でなくて、他の男性であったとしたら、彼女の逃げ走った足は、決して、二十歩や三十歩ではなかったろう。
なぜ、二十歩ほどで足を止めて、後に心を惹かれているのか。――それのみでなく、やや動悸が落着いてくるに従って、彼女の心の中には醜い人間の本能の相を、他の男性のそれと、武蔵のそれとは、べつな物として、考えようとさえしていた。
(……怒ったんですか。……怒らないでくださいね。あなたが嫌だったわけではありません。……怒らないで)
暴風に吹き飛ばされたような独りぼっちを感じながら、彼女の胸の中の言葉は、ひたすら詫びているのだった。――武蔵自身が、自責したり苦悶したりしているほどに、お通は、彼のなした烈しい行動を、醜く思ってはいなかった。他の男性のように浅ましくは思えないのである。
むしろ、ふと、
(なぜ、わたしは? ……)
自分の盲目的な恐怖が、淋しくすら考えられ、その刹那の火花のような血の狂いが、後になるほどなにか慕わしくさえ思い出された。