Classici giapponesi con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 508.883 caratteri · 1017 schermate
八
どうか、そんなに見せびらかさねえで、お金で払っておくんなさいまし」
最前から、酒の酔をさまして、固唾をのんでいた三名の野武士は、おやじの抗議を、尤もだというように、後ろでうなずいていた。
八
自分の金ではない――というような弁解をしてみるのも、この場合は、愚の至りである。
「そうか……では仕方がない」
武蔵は、やむなく一箇の銀片を出して、おやじの手に渡した。
「はて、剰銭がないが。……旦那様、もっと細かいお鳥目で下さいませ」
武蔵はまた、金を調べてみた。しかし包みは慶長小判と、それがいちばん小さくて安い銀片であった。
「剰銭はいらぬ、茶代に取っておくがいい」
「それは、どうも」
と、おやじは急に打って変る。
もう手をつけた金なので、武蔵はそれを腹巻へ巻いた。そして、茶店のおやじから嫌われた木彫の観音像を、元のように、武者修行袋に入れて背中へ背負う。
「まあ、あたって行かっしゃれ」
と、おやじは薪をくべ足したが、武蔵はそれを機に、戸外へ出た。
夜はまだ深い。けれど腹ごしらえもまずできた。
夜明けまでに、この和田峠から大門峠まで踏破してしまおうと思う。昼ならば、この辺りの高原は、石楠花やりんどうや薄雪草も数あるらしいが、夜はただ渺として、真綿のような露が地を這っているばかり。