Classici giapponesi con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 508.883 caratteri · 1017 schermate
七
……おまえはそこで今、なにを考えていたのか」
「べつに……なにも」
「おれのことを考えていてくれたのじゃないのか。おれは一日だって、おまえのことを思い出さない日はなかったぜ」
そろそろ歩み寄って来る又八の姿がお通の眼に映った。お通は婆がいてくれないので、不安に襲われた。
「又八さん、お婆様から、なにか話を聞きましたか」
「ア、今この上で」
「じゃあ、私のことを」
「うむ」
お通は、ほっとした。
かねて婆も約束してくれた通りに、自分の意思は、婆の口から又八へ通じてくれたものと思った。そして又八はその承諾を与えてくれるために、ここへ一人で来たのであろうと解釈していた。
「婆様からお聞きならば、私の気持はもう分ってくれたはずですが、私からもお願いいたします、又八さん、どうぞ以前のことは、縁のなかったものと思って、今夜かぎり忘れてくださいましね」
七
老母とお通との間に、どんな約束が交わされていたのだろうか。元よりお婆のいい加減な子ども騙しには違いない。そう考えられるので又八は、お通が今いったことばにも、
「いや、まあ、お待ち」
顔を先に振って、そのことばの底にある彼女の意思を問おうとしなかった。