Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

Leggi 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 508.883 caratteri · 1017 schermate

Aozora Bunko

三

「いけないッ、いけませんッ、武蔵様ッ」

栗の辣みたいに自衛して、堅く身を縮めた。

「そ、そんなことっ……。貴方ともあろうお人が」

と、悲しげに、彼女が、嗚咽したので――武蔵はハッとした。焔の身に、ぞッと総毛立つような理智の冷たい声を浴びて、

「なななぜだっ? 何故だっ?」

呻きに似た彼の声こそ今にも泣き出しそうだった。誰も知らない秘密にせよ、これは男性には耐え難い侮辱と感じるのだ。遣り場のないその憤りと恥かしさを、彼は自分へ怒るように喚いたのだった。

――だが、手を放した途端に、お通はもうそこにいなかった。小さい匂い袋が一つ、紐が切れて落ちている。彼の眼は茫然と、それを見て泣きかけていた。浅ましい自己のすがたを冷たく客観することができた。ただ分らないのはお通の心なのだ。お通の眸、お通の唇、お通のことば、お通の全姿――あの髪の毛までが、絶えず自分の情熱を誘いかけて、きょうに至ったのではないか。

自分で、男性の胸に火を放けておきながら、火がつくと、びっくりして逃げてしまうのと同じである。故意ではないにしても、結果においては、愛する者を欺き、陥れ、苦しめ、恥かしめたことになるではないか。