Classici giapponesi con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 508.883 caratteri · 1017 schermate
十一
(おさらば)
ともいわず――彼方の死地へさして行く足を大股に急ぎかけていた。
「あっ、もう……」
お通が十歩追うと、武蔵も十歩駈けて、そして振顧った。
「お通さん、よく分った。――だが犬死をしてはならないぞ。不幸に追い詰められて、死の谷間へ辷り落ちて行くような、弱い死に方をしてはならないぞ。も一度その体を健康に戻してから、健康な心でよく考えてみるといい。わしだってこれから無駄に生命を捨てに急ぐわけじゃない。永遠の生をつかむために一時、死のかたちを取るだけのことだ。――わしのあとに従いて死んでくれるよりは、お通さん! 生き残って永い眼で見ていてくれ、武蔵の体は土になっても、武蔵はきっと生きているから!」
いい続けた息のまま、武蔵はもう一言、
「いいか、お通さん! わしの後に従いて来るつもりで、見当ちがいな方へ一人で行ってしまうなよ。わしの死んだという形を見て、武蔵を冥途に捜しても、武蔵は冥途には行っていない。武蔵がいるところは、百年後でも千年後でも、この国の人間の中だ、この国の剣の中だ。他にはいない」
いい捨てると、もう、お通の次のことばが届かない方まで、彼の姿は遠ざかっていた。