Classici giapponesi con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 508.883 caratteri · 1017 schermate
四
何分、雨に逢って、着物もずぶ濡れだから、一時娼家の物を借り着するが、実は今日瀬田の唐橋で約束の者が待っているはず。――で直ぐ帰るのだから、その間に衣類を乾かし、引き留めないでもらいたい。
「頼むぞ、いいか」
何度も念を押すと、
「はい、はい。よい機に、きっとお帰し申しますよ」
女たちは、安請合いにいって、又八を梯子段の下から押し上げる。
(二階の客とは一体誰だろうか)
又八は頻りと考えてみたが思い当る者がない。けれどこういうところに場馴れない又八ではないし、またこういう雰囲気の中に入ると、彼の頭のつかい方や身ごなしは、ふしぎに冴えて精彩を発揮してくる。
「やあ、犬神先生」
いきなり先方の者からいった。人違いだったかと又八は閾ぎわで足を止めたが、座敷の中に坐っているその客を見ると、満ざら知らない人間ではなかった。
「や? ……おぬしは」
「お忘れか、佐々木小次郎を」
「犬神先生といわれたのは?」
「貴公のことさ」
「おれは本位田又八だが」
「そんなことは心得ているが、かつて六条松原の闇で、群犬に取り巻かれ、野良犬どもの中に坐って、百面相をしてござったのを思い出したから、お犬の神様と尊称申し上げ、犬神先生と呼んだのでござる」