Classici giapponesi con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 508.883 caratteri · 1017 schermate
六
先が闇であろうと、沼であろうと無鉄砲に駈けているもののように見えるが、朱実は、城太郎が泣き声だして、後ろで呼んでいることを知っている。
ひそかな芽生えを乙女の胸にもちながら、その芽を、あらぬ男に――あの吉岡清十郎にふみにじられて――住吉の海へまっしぐらに駈けこんだ時には、ほんとに、死の彼方まで行く気であったが――今の朱実には、その口惜しさだけがあっても、それまでの純真さはすでにない。
(誰が、死ぬものか)
と、自分へいいながら、ただわけもなく、城太郎が後ろから駈けて来るのが面白くて、世話をやかせてやりたいのだった。
「あっ、あぶないっ」
城太郎は、呶鳴った。
彼女の先に、濠の水らしいものが、闇に見えたからであった。
たじろぐ彼女を後ろからひしと抱き止めて、
「朱実さん、およしよ、およしよ。死んだってつまらないじゃないか」
引きもどすと、よけいに、
「だって、おまえだって、武蔵様だって、みんなあたしを、悪者のように思ってるじゃないか。あたしは、死んでこの胸に、武蔵様を抱いてゆく。……そして添わせるものか、あんな女に」
「どうしたのさ。何が、どうしたのさ」
「さあ、その濠の中へ、あたしを突きとばしておくれ。