Classici giapponesi con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 508.883 caratteri · 1017 schermate
通夜童子
一
いや村というほどな戸数もない。一面に篠や蘆や雑木の生えている荒野であった。里の者は、法典ヶ原といっている。
常陸路の方から今、ひとりの旅人が歩いて来る。相馬の将門が、坂東に暴勇をふるって、矢唸りを恣にした頃から、この辺りの道も藪もそのままにあるように蕭々としたものだった。
「――はてな?」
武蔵は、行き暮れた足を止めて、野路の岐れに立ち迷っていた。
秋の陽は野末に落ちかけ、ところどころの野の水も赤い。もう足元も仄暗く、草木のいろも定かでない。
武蔵は、燈を探した。
ゆうべも野に寝た。おとといの夜も山の石を枕に寝た。
四、五日前、栃木あたりの峠で豪雨にあい、それから後、少しからだが気懶い。風邪気などというものは知らなかったが――なんとなくこよいは夜露がもの憂いのである。藁屋の下でもよい。灯と、温かい稗飯がほしかった。
「どことなく潮の香がする……。四、五里も歩けば海があるとみえる。……そうだ、潮風を的に」
と、彼はまた、野道を歩いた。
しかし、その勘があたるかどうかわからない。もし海も見えず家の灯も見えなければ、こよいも秋草のなかに、萩と添寝をするしかないと思う。