Classici giapponesi con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 508.883 caratteri · 1017 schermate
五
待ちかねていた権之助は、おうと武蔵の前に棒をひっ提げて立った。武蔵は直立したまま、相手を静かに見た。
「…………」
武蔵には木剣の用意がない。そこらの得物を拾って持つ様子もなかった。肩も張らず、二本の手は柔かに下げたままである。
「支度をしないのか」
今度は権之助からいった。
武蔵は、
「なぜ?」
と、反問した。
権之助は、憤っと、眼から出すような声で、
「得物を把れ、何でも好む物を」
「持っておる」
「無手か」
「いいや……」
首を振って、武蔵は、左の手をそっと忍ばすように、刀の鍔の下へ移して、
「此処に」
といった。
「なに! 真剣で」
「…………」
答えは、唇の端に歪めた微笑を以てした。低い一声、静かな呼吸の一つも、もう徒らに費やすことはできないものになっている。
落葉松の根元へ、濡れ仏のように、べたっと坐り込んでいた老母の顔は、途端にさっと蒼ざめた。
五
――真剣で。
武蔵がいったために、老母は急に動顛したのであろうか。
「ア。待って賜も」
ふいに横からいった。
だが、武蔵の眼、権之助の眼、そう双つのものは、もうそれくらいな制止では、針程も動かなかった。
権之助の棒は、この高原の気をみんな吸って、一撃の唸りにそれを噴き出そうとするもののように、じっと小脇に含んで構え、武蔵の片手は、鍔の下に膠着したまま、相手の眼の中へ