Classici giapponesi con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 508.883 caratteri · 1017 schermate
四
やっと、床几を立ち上がった。そして軒先にいる小次郎の側へ歩いて来た。
「…………」
にこやかな唇元と、心の奥を見透すような眼とを持って、武蔵は立った。小次郎もまた、笑みを持ってそれに応えようとしたが、意思と反対に、顔の筋は妙に硬ばってしまって、笑えなかった。
無意識に跳び退いた自分の敏捷を――必要のないあわて振りと――武蔵の眼が嗤っているように取れたからである。また、自分が、先刻から石切たちに向って演舌していた事々を、武蔵も聞いていたに違いない――と思い、咄嗟にその狼狽も胸を塞いだからであろう。
で――とにかく、小次郎の顔いろと態度は、すぐいつもの傲岸な風の裡へかえしてしまったが、一瞬は、しどろもどろだった。
「……や。武蔵どの。……これにいたのか」
「いつぞやは」
武蔵がいうと、
「おう、いつぞやは、眼ざましいお働き、人間業とも思われなかった。しかも、さしたるお怪我もなかったそうな。……祝着の至りです」
負け惜しみの底に、苦い矛盾を肯定しながら、つい、こう小次郎はいってしまった。そして自分で吐いた言葉を自分で忌々しく思った。
武蔵は、皮肉であった。なぜなのか、この小次郎の風采や態度に面と対うと、彼は皮肉を弄したくなった。