Classici giapponesi con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 508.883 caratteri · 1017 schermate
――武蔵は顧みて、自分の成長を思うと気恥ずかしい心地がする。
だが、伊織に対しては、どこまでも自分は千年杉の大樹の如くであらねばならぬと思う。沢庵坊のような酷い慈悲も持たねばならぬと思う。また、それが、かつての恩人に対しての、いささかな報恩ではないかとも思った。
「……伊織っ、伊織っ」
外の豪雨に向って、武蔵は再三再四呼んでみた。
何の返辞もない。ただ雷と、どうどうと軒先の水音が騒がしいのみである。
「どうしたのか」
武蔵すら、出てみる勇気もなく、小屋に閉じこもっていたが、そのうちに、はたと雨が小やみになったので、外へ出て見まわすと、何という強情な性質の童子だろうか、伊織はまだ依然として、前にいた耕地の所から一尺も動かずに立っているのだった。
(すこし白痴か)
とすら、疑えないこともない。
あんぐりと口を開いて、先刻、大泣きに泣いたままな顔をして、――もちろん頭からズブ濡れになって、泥田になった耕地に案山子みたいに立っているのだ。
武蔵は、近くの、小高い所まで駈けて行って、思わず、
「ばかっ」と、叱った。
「はやく小屋へはいれ、そんなに濡れては体に毒だ。ぐずぐずしておると、そこらに河が出来て、戻れなくなるぞ」