Classici giapponesi con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 508.883 caratteri · 1017 schermate
「……もしや?」
武蔵はふと案じ出した。その濁流に流されてゆく種々な物を見て、ゆうべ闇夜に帰ろうとした伊織が、過って、溺れでもしてしまったのではあるまいか――と聯想されたからである。
だが、彼はその時、ごうごうと地も空も水に鳴る暴風雨の中で、伊織の声をどこかに聞いた。
「せんせーいっ。……先生ーッ」
武蔵は、鳥の浮巣みたいにみえる彼方の洲に、伊織らしい影を見た。いや伊織にちがいない。
何処へ行ったのか、彼は牛の背に乗って帰って来たのだ。牛の背には自分のほかに、何か縄で絡げた大きな荷物を、後先に縛しつけている。
「おおう……?」
と見ているまに、伊織は、牛を濁流へ乗り入れた。
濁流の赤いしぶきと渦は忽ち彼と牛をつつんでしまう。流され流され、やっと、此方の岸へ着くと牛も彼も、身ぶるいしながら、小屋のある所へ駈け上がって来た。
「伊織! 何処へ行ったのだ」
半ば怒るように――半ばほっとしたように、武蔵がいうと、伊織は、
「何処へって、おら、村へ行って、食い物をうんと持って来たんじゃないか。この暴風雨は、きっと半年分も降ると思ったから。――それに暴風雨がやんでも、この洪水はなかなか退かないにきまってるもの」