Classici giapponesi con furigana
ja-reading.com
Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.
みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 508.883 caratteri · 1017 schermate
「――いない」
「――おりません」
痴呆のような返辞をすると、
「いない理があるかっ」
源左衛門は歯がみをしながら、
「わしらが駈け出すまで、たしかに突っ立っていた影がここに見えたのじゃ。まさか、翼のあるわけでもあるまい、一太刀、武蔵に酬わんでは、吉岡の一族として、わ、わしの面目が立たぬ」
すると、そこにかたまっている大勢の中から一人があッといって、指さした。
自分たちの仲間から発したあッという声であるのに、その衝動をうけて皆、どっと一歩ずつ後方へ身を退き、そして、指さした者の指先へじっと視線をそろえた。
「武蔵」
「オオあれか」
「うーむ……」
一瞬、なんともいえない寂寞の気が漲った。人のない天地の静かさよりも、人中の空気にふと湧いた寂寞のほうが不気味な霊魂をふくんでいた。鼓膜も頭の中も真空になって、物を見る眼が、物を映しているだけで、思考に容れることを忘れ果てたかのようになる。――
武蔵は、その時、伝七郎を倒した場所から最短距離の建物の廂の下に立っていたのである。
――それから。
相手方の様子を見つつ、壁を背にしたまま、徐々と横歩きにあるき、三十三間堂の西の端縁へのぼって、悠々とさいぜん立った所の縁の中ほどまで足を移していた。