Classici giapponesi con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 508.883 caratteri · 1017 schermate
――茶をたてて楽しむことが目的ならば、なにもわざわざ茶釜や茶碗を持って来て、物好きな不自由をしないでも、本阿弥家ともいわれる旧家である。住居にはよい茶室もあるに違いない。
(絵を描くためか?)
と、武蔵はまた考えて、光悦の広い背中を見まもった。
すこし身を横へねじって、その光悦の筆をのぞいてみると、先刻もそうであったが、今もまた懐紙へ描いているのは、水の流ればかりであった。
ここから少し離れている枯草のあいだに、うねうねと細い野川の水が這っていた。光悦は、その水の相を線に現そうとして他念もない様子なのである。つかもうとしても墨を通して紙のうえへ象として現してみると、なにもつかまれていないので、光悦は、何十遍でも、水の相をつかむまで、飽かずに同じ線を描いているのだった。
(……ははあ? 絵もなかなか易しくないものだ)
武蔵はふと、そこへ自分の退屈を預けて見恍れる。
(――敵の相を剣のさきへおいて、自分が無我になった時――自分と天地がひとつの物になったような気持――いや気持などというものさえ失くなった時、剣はその敵を斬っている。――光悦どのは、まだあの水を敵として睨んでいるから描けないのだろう、自分があの水になればよいのだ)