Classici giapponesi con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 508.883 caratteri · 1017 schermate
「…………」
茫然とお通は残っていた。遠く去ってゆく武蔵の影は、自分の胸から抜け出した自分自体であるような心地だった。――別れという悲しみは、二つのものの離散から生じる感情なので、お通の今の気持には、別れの悲しみというような、そんなべつべつな意識の悲しみは持てなかった。ただ、大きな生死の濤に持って行かれようとしている彼身此身の、ひとつ魂にふと戦慄の眼をふさぐだけだった。
――ざ、ざ、ざ、ざ
とその時、崖の上から、土ころが彼女の足元まで崩れて来た。すると、その土音を追いかけるように、
「――わあっ」
と城太郎が、木や草を掻分けて飛び下りて来た。
「まあっ!」
お通でさえ、ぎょっとした。
なぜならば、城太郎少年は、奈良の観世の後家からもらった鬼女の笑仮面を、こんどは烏丸家へ帰らないものと思って大事にふところへ所持して出かけて来たらしく、見ると今、その仮面を顔にかぶって、
「ああ、驚いた!」
と、ふいに眼の前へ立って、両手を挙げたからである。
「なんですっ? 城太さん」
お通が問うと、
「なんだか、おいらも知らないけど、お通さんにも聞えたろ。キャーッっていった女の声がさ」