Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

Leggi 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 508.883 caratteri · 1017 schermate

Aozora Bunko

(――自分では、玲瓏な身になり切っていたつもりでも、まだ五体のどこかには、生きたいとする血もうずいていたに違いない。お通のことやら、故郷の姉のことやらが――そして藁をもつかみたいとする恃みが――ああ、無念な! われを忘れて鰐口の綱へ手を差し伸べさせたのだ。――この期になって神の力を恃もうとしていた)

お通には泣かなかった涙を、武蔵は滂沱と頬にながして、わが身に、わが心に、わが修行に、万恨の無念を持つのであった。

(――無意識であったのだ、恃もうとする気持も、祈ろうとする言葉も考えずに、ふと鰐口の綱を振ろうとした。――だが、無意識だから、なおいけないのだ!)

叱っても叱っても、叱りきれない慚愧なのである。自分が口惜しいのだ。こんな浅い修行をして来たきょうまでの日々であったかと思うと、

(愚鈍め)

憐むべき自分の素質を考えるほかなかった。

すでに空身。なにを恃みなにを願うことがあろう。戦わぬ前に心の一端から敗れを生じかけたのだ。そんなことで、なにがさむらいらしい一生涯の完成か。

だが――武蔵はまた卒然と、

「有難いっ」とも思った。

真実、神を感じた。まだ幸いにも、戦いには入っていない。