Classici giapponesi con furigana
ja-reading.com
Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.
みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 508.883 caratteri · 1017 schermate
けれど、恃む師もなく、山野の危難と、生死の巷を修行の床として、おぼろげながらも、剣の何物かを知らんとし、道に学ぶためには、いつでも死身となる稽古をして来た武蔵とは、根本からその心がまえも鍛えも違っている。――そういう吉岡方の人々の常識から見ると、もう呼吸もあらく、顔色もなく、満身朱になりながらも、まだ、二本の刀を持ち、触れれば何物も一颯の血けむりとしてしまいそうな、武蔵の阿修羅そのままな姿が、なにか、不可思議なものに見えてきた。気は晦み、眼は汗にかすんで、味方の血に戸惑うてくるにつれ、武蔵の姿が、いよいよ、捉え難くなり、しまいには、なにか真っ赤な妖怪と闘っているような疲労と焦りが全体に見えた。
七
――逃げろうっ。
――一人の方っ……
――逃げろ、逃げちまえっ。
山がいう。
里の樹々がいう。
また、白い雲がいう。
足を止めた往来の者や、附近の百姓たちが、遥かに、重囲の中の武蔵を見て、その危なさに気を揉むのあまり、どこからともなく、われを忘れてあげた声であった。
たとえ地軸が裂け、天を覆す雷があっても、武蔵の耳に、そんな声の届くわけもない。
彼の身は、彼の心力だけにうごいている。