Classici giapponesi con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 508.883 caratteri · 1017 schermate
では、まったく、眼中にないのかといえば、故郷ではひどい目に遭わされているし、清水寺の境内では、群衆の中で、唾せんばかり罵倒されているし――その他、きょうまでというもの、どれほどこの老獪なばばのために、事を邪げられたり、脛を掬われるような思いを嘗めさせられているか知れないので、その折々には、
(おのれ、どうしてやろう)
と、八つ裂きにしてもあき足らないほど、憎くも思い、憤りもするのであったが、さて――自分の寝首を掻かれ損なってみても、心底から、
(悪婆!)
と、怒りにまかせて、この細ッこい皺首を捻じ切る気にはなれなかった。
それに今度は、お杉婆そのものもまた、いつになく元気がない、ゆうべの打身を痛がって呻いてばかりいるし、辛辣な毒舌も振わないので、武蔵は一しお不愍になり、はやく体だけでも丈夫にしてやりたいがと思うのだった。
「おばば――牛の背も辛かろうが、大津まで行けば何とか思案がつこうで、も少しの辛抱。……朝から弁当も食べていないが、腹は空いていないかな。……水でも飲みとうはないか。なに? ……要らぬ……そうか」
この峰づたいの天井から眸を四顧にやると、北陸の遠い山々から、琵琶の湖はいうまでもなく、伊吹もみえ、近くは瀬田の唐崎の八景まで一つ一つ数えられる。