Classici giapponesi con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 508.883 caratteri · 1017 schermate
その指さす薄暮の中へ、武蔵の影はもう宙を飛んで淡れて行く。
途々、聞きあつめた噂を綜合してみても、なんのために、何者が、彼女を拉して行ったのか、見当がつかない。
その下手人が又八であるなどとは、彼には想像もできなかった。いずれこの道中で後から追いついて来るか、江戸表で落合うかすることにはなっているが、いつぞや叡山の無動寺から峰越えして大津へかかる途中の峠茶屋で五年越しの誤解を解き、お互いが幼友達の昔に返って、
(きょうまでのことは水に流して)
と手を握り、
(貴様も真面目になって、希望を持て)
と武蔵が励ませば、又八も目に涙すらたたえて、
(勉強する。きっと真人間になって遣り直すから、おれを弟とも思って、これからは導いてくれ)
と、あれほど欣んでいった又八。
その又八が? ――などとどうして疑われようか。
疑えば、戦後の各地に、職を求めながら職にも就けず、結局、浮浪の徒とよばれている牢人の中のよからぬ者か。或は、世の中の推移にかかわらず世間の抜け目ばかり窺っているゴマの灰とか、人買とかいう、道中荒らしの鼠賊か。さもなければ、剽悍なるこの地方の野武士か。