Classici giapponesi con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 508.883 caratteri · 1017 schermate
息子の権が投げられたことは、この老母には、非常な意外であったらしい。――投げつけた武蔵の手は当然、次の咄嗟には、刎ね起きる権之助の真っ向へ、抜打ちに一太刀行くべきであった。
だが、そうではなくて、
「おう、待ってやる」
武蔵は、権之助の胸へ馬のりになり、なお、棒を離さない右の手頸を足で踏みつけたまま老母の顔の見えた小窓を振り仰いだ。
「……?」
はッと、武蔵はしかしすぐ眼を反らした。
なぜならば、老母の顔は、もうその窓に見えなかったからである。――組み伏せられながらも権之助は、絶えず武蔵の手を外そうともがいているし、武蔵の制圧も届かない彼の二本の脚は、空を蹴ったり、地へ突っ張ったり、その腰車の脚技のあらゆる努力をあげて、敗地を挽回しようとしているのだった。
それも決して、油断はできない上に、窓から消えた老婆の影は、すぐ厨の蔵からさっと走り出て来て、敵に組み敷かれている息子を罵っていうことには、
「何のざまじゃ、この不覚者が。母が助太刀して取らす、負くるな」
――窓口から待てという言葉だったので、武蔵は必ずや老母がこれへ来て、額を地にすりつけて、わが子の助命を乞うのかと思っていたところ、案に相違して、九死一生の淵にある息子を励まし、なお戦おうというつもりらしい。