Classici giapponesi con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 508.883 caratteri · 1017 schermate
沼がふかいので、もがく程、牛は沼に辷り込み、その図ウ体を持てあまして、哀れな啼き声をあげている様子。引き上げてやって見ると、まだ乳ぶさも若い牝牛であるし、辺りをたずねても飼主の姿はみえぬし、てっきりこれは何処からか盗み出して来た野盗が持ち扱って、捨てて行ったものに違いあるまい――と独りぎめにきめてしまった。
「牛一匹あれば、ヘタな人間の半人前は野良仕事をするので、これはおれが貧乏で、おっ母にろくな孝養もできねえから、天が授けてくれたものと――あはははは良い気になって曳っぱって来ただけのものさ。飼主が分っちゃ仕方がねえ、牛はいつでも返すよ。だが、お通とか城太郎とか、そんな人間のこと、おらあ一切知らねえぞ」
話が分ってみると、権之助なるこの若者は、いかにも粗朴な田舎漢で、最初の間違いは、その率直な美点からむしろ起ったものといえる。
「じゃが旅のお侍、さだめしそれは心配なことでござろう」
と老母はまた老母らしく側から案じて、息子にいう。
「権之助、はよう晩飯を掻っこんで、その気の毒なお連れを一緒に探してあげい。野婦之池あたりにうろついていてくれればよいが、駒ヶ岳のふところへでもはいりこんだら、もう他国者の衆に知れることじゃない。