Classici giapponesi con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 508.883 caratteri · 1017 schermate
「いねえや、はてな?」
誰よりも血眼に藤次が呶鳴りつけた。
「そんな筈はねえ。途中の岩にぶつかって、刎ね飛ばされているのかも知れねえ。もっと、そっちも探してみろ」
その言葉の終らないうちに、彼の見廻している谷間の岩も水も雪崩の草も、いちめんに夕焼色にぱっと明るく染まった。
「――あっ?」
「――おやっ?」
賊は皆、顎を空へ振り上げた。およそ七十尺もある絶壁である。その上に乗っていた藤次の住居は、棟、障子、窓、四方から真っ赤な焔を噴き出しているではないか。
「あれえっ。あれえっ。来ておくれよっ」
ただ独りで、気も狂わんばかりな悲鳴をあげているのは、お甲にちがいない。
「大変だ、行ってみろ」
道を攀じ、藤づるを攀じ、賊はまた、上へ這い上がった。断崖の上の一軒屋、焔と山風にはよい弄り物だった。お甲はと見れば、火の粉をかぶりながら、近くの樹の根に後ろ手を縛りつけられている。
いつの間に、どうして抜けたろうか。逃げたという武蔵が、賊には何だか信じられなかった。
「追っかけろ、これだけいれば――」
藤次はいう勇気もなかったが、武蔵を知らぬ他の賊はそのままではいる筈もない。