Classici giapponesi con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 508.883 caratteri · 1017 schermate
唐橋もない。ただ、漠とした一面の藪山であった。
「あっ? ……誰だろう……あんな所から人間が?」
城太郎が佇んでいた道の片側は、砦の下を繞っている侍屋敷の塀であった。
そして一方は、田圃と沼であった。――
その沼と田圃の端れからすぐ、嶮しい藪山の裏が、生えたように急に聳え立っている。
道もないし、石段も見えないから、恐らく、この辺は砦の搦手であろう。――だのに今、城太郎が見ていると、その藪山の絶壁から、綱を垂らして、降りて来る人間がある。
綱の先には、カギがついているとみえて、その綱の端まで降りてくると、足の先で、岩や木の根を探り、下から振ってカギを外し、またさらに下へ綱をのばして、スルスルと降りて来る。
――そして遂に、田圃と山の境まで下がって来ると、その人影はいったん其処らの雑木藪の中に見えなくなってしまった。
「なんだろ?」
城太郎の好奇心は、自分の身が宿場の灯から遠い所へ迷って来ていることをも忘れさせてしまった。
「……?」
だがもう、彼がいくら眼をまるくしていても、何も見えて来なかった。
それだけにまた、彼の好奇心は、そこを去りかねた様子で、往来の樹陰にひたと身をつけて、やがて田圃の畦を渡って、自分の前へ来そうな気のする――先刻の人影を待ちぬいていた。