Classici giapponesi con furigana
ja-reading.com
Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.
みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 508.883 caratteri · 1017 schermate
「――以前のことなんかいわれると、おれは辛い。まったくおれが悪いのだ。今さら、おまえにあわせる顔もない次第で――おまえのいう通り、これが忘れられるものならば、忘れてしまいたいと山々思う。だが思うだけで、なんの因果か、おれはおまえを諦めきれない」
お通は、当惑して、
「又八さん、二人の心と心のあいだには、もう通うもののない深い谷間ができました」
「その谷間に、五年の年月が流れて行ったのだ」
「そうです、年月が返らぬように、私たちのむかしの心も、もう呼びもどすことは出来ません」
「で、できないことはないよ! お通、お通っ」
「いいえ。――できません」
お通のそういう冷やかな語尾と顔いろに驚いて、今さらのように眸をすえてしまう又八であった。
情熱が表にあらわれる時は、真紅の花と太陽の狂いあう夏の日を思わせるような性質のあるお通の一面に――こんな冷やかな――まるで白い蝋石を撫でるような感じのする――そして指を触れれば切れそうな厳しい性格が、どこに潜んでいただろうか。
そういう冷たい面の彼女を見ていると、又八の頭にはふと、七宝寺の縁側が思い出された。
――あの山寺の縁側で、なにか考えごとをしながら、うるみのある眼で、半日でも一日でも、空を見て黙っている時の孤児のすがたを。