Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

Leggi 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 508.883 caratteri · 1017 schermate

Aozora Bunko

皮を剥いて、彼女の手に持たせてやると、お通は、なにかつよい感情に衝かれたとみえ、顔を横にかくしたまま、蜜柑は喰べようともしないのであった。

「どうしたのさ」

城太郎は、その顔をのぞきこんだ。

厭うように、お通は、よけいに枕へ顔を埋めてしまい、

「……どうもしやしない。どうもしやしない」

といった。

城太郎は、舌打ちして、

「また、泣虫が始まったね。歓ぶかと思って蜜柑を買って来たら、泣いちまうんだもの――つまらねえなあ」

「ごめんよ。城太さん」

「喰べないの」

「……ええ後で」

「剥いたのだけ喰べてみなよ。ね……喰べてみれば、きっと、美味しいよ」

「美味しいでしょう、城太さんの気持だけでも。……だけど喰べ物を見ると、もう唇へ入れる気にならないんです。……勿体ないけれど」

「泣くからさ。なにがそんなに悲しいの」

「城太さんが、あんまり親切にしてくれるから、欣しくって」

「泣いちゃ厭だなあ、おいらも泣きたくなっちまわあ」

「もう泣かない……もう泣かない……かんにんしてね」

「じゃ、それ喰べてくれる。なにか喰べないと、死んじまうぜ」

「わたし、後でいただきます。城太さんお喰べ」

「おいらは、喰べない」