Classici giapponesi con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 508.883 caratteri · 1017 schermate
その指先も、その朱い数珠も、かすかに顫いているので、武蔵はこの尼さんがなにをそんなに恐怖しているのかを怪しんだ。――で、彼は、尼さんが自分を野伏りの追剥とでも誤解しているのではなかろうかと思い、
「オオ、もうそんなに青い菜が出ていますか、春だからなあ、芹も採れていますね、すず菜も、母子草も、ああ、摘み草ですね、おばあさん」
殊さらに親しみを見せ、そばへ寄って、小笊の中の青いものを覗きかけると、老尼は、愕然と小笊をそこへ捨てて、
「――光悦や」
誰かを呼びながら、彼方へ駈けてしまった。
「…………」
武蔵は、あっけにとられたように、老尼の小さい体の行く先を見ていた。
ただ見れば、平たい野面にすぎないが、平たい野の中にもゆるい起伏がある。老尼の姿が、そのわずかに低い地の蔭になった。
人の名を呼んだところから考えると、そこには誰か、老尼の連れがいるにちがいない。そういえば、かすかな煙がその辺から漂っている。
「せっかく、あの老尼が丹精して摘んだものを……」
武蔵は、そこらへこぼれた青い種々のものを、小笊の中へ拾いあつめた。そして、自分は飽くまでやさしい心を示すつもりで、その小笊を持って、老尼の後から歩いて行った。