Classici giapponesi con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 508.883 caratteri · 1017 schermate
月はもう傾いているので、この水には宿っていなかったが、鮮やかな月の雲は、空を仰いで直かに見るよりも、水に映っている空のほうが一倍美しく見えた。
病人に掬って持って行くよりも、城太郎はふと、自分が先に飲みたくなったのであろう、五、六歩位置を移して、今度は水際に膝をつき、家鴨のように水面へ首を伸ばしたが、
「……あッ?」
大きく叫んだまま、彼の眼はなにものかに吸いつけられ、河童頭の毛はそそけ立って、じーっと、栗の実みたいに、五体をかたく竦めてしまった。
「……?」
水の向う岸から五、六本の樹の影が、縞目のように映っていた。その樹の端に人影が見えたのである。水に映っている武蔵の影を彼の眼は見たのである。
「…………」
びっくりしたことは勿論、びっくりしたに違いないが、水面に映っている武蔵の影だけでは、城太郎はまだほんとに――物の現実に向ってびっくりしたのではなかった。
ふいに、物の怪の悪戯が、思いつめている心の武蔵の影を藉りて、さっと、通り抜けて行ったような――そんな驚きであったのである。
怖々と、彼はその驚きの眼を水面から向う側の木蔭へ上げてみた。こんどはほんとに仰天したのだった。