Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

Leggi 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 508.883 caratteri · 1017 schermate

Aozora Bunko

ただ倖せなことには、秋の月がまんまると空にある。啼きすだく虫の音がある。こんな夜にお通は笛をふくのが好きだったと思う。……虫の音が皆、お通の声、城太郎の声に聞えてくる。

「……お。家がある」

灯を見つけた。武蔵は、しばらく何もわすれて、その一ツ灯へ向って歩いた。

近寄ってみると、まったくの一ツ家で、傾いた軒よりも、すすきや萩の背のほうが高く見える。大きな露と見えるのは、やたらに壁を這っている夕顔の花だった。

彼が近づくと、突然、大きな鼻息を鳴らして怒るものがあった。家の横につないであった裸馬である。馬の気配ですぐ知ったとみえ、明りのついている家の中から、

「誰だっ」

と呶鳴る者があった。

――見ると、先刻、泥鰌を分けてくれなかった子どもである。これはよくよく縁があると、武蔵は思わず微笑んで、

「泊めてくれぬか。夜明けにはすぐ立去るが――」

いうと、子どもは、先刻とはちがって、武蔵の顔や姿をしげしげ眺めていたが、

「あ。いいよ」

と、素直に頷いた。

三

これはひどい。

雨が降ったらどんなだろう。月明りが屋根からも壁からも洩る。

旅装を解いても、掛ける釘もなかった。