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くろだじょすい

黒田如水

吉川 英治

「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页

青空文庫

――で、秀吉はこの一勢力の重要性も疾くから見ていたので、こんど安土で官兵衛と会い、また信長の内意もほぼ定まるものあるを察して、

(いちど其許も、山中鹿之介幸盛と会って、充分、意志を通じておかれるがよくはないか)

と、暗示したものであった。勿論、官兵衛はその方面の情勢には通じていたし、秀吉がそういうからには、愈中国出陣の日も近いにちがいないと感じたので、姫路へ帰る予定を急に更えて、単身その脚で山陰へ廻ったものであった。

そのほか、彼の胸には幾多の策が抱かれていた。それを行うには、体が幾つあっても足らない気がした。ほとんど漂泊の一浪人に等しい姿で、約一ヵ月を駆け歩いた。

尼子勝久にも会い、鹿之介幸盛とも熟談した。また但馬、伯耆、播磨に散在している旧赤松一族の庶流を訪ね歩いて、

(天下はかならずかく動く。またかくあるべき天下の将来でなければならない)

という自己の信念を説きまわった。大胆にも彼は、その信念をもって三木城の別所長治にまで会見しに行った。

三木城は由来、毛利加担の旗頭といってもよい程、明白なる反信長の旗幟を立てていたが、黒田官兵衛の熱烈な信念と誠意の弁は、ついに城主の長治をして、