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くろだじょすい

黒田如水

吉川 英治

「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页

青空文庫

二

そしていま議論も尽き果て、さっきから官兵衛の誹謗ばかり並べていた老臣以下の面々は、とたんに黙りこんで、敢て眸もうごかさず、官兵衛が着席する様子をも強いてみな無視していた。

二

主君の座にむかって、官兵衛は一礼した。それから瞼の腫へ掌をあてながら、しきりにそこの熱を気にしているふうだった。

向う側の老臣席の者をはじめ、人々は眼をそろえて、ややしばし官兵衛の一身へ、意地わるげな沈黙を向けていたが、官兵衛もまた洒然と黙りこくっているので、ついに主人小寺政職の一族小川三河守までが、肚にすえかねたような面色をもっていい出した。

「官兵衛どの。大事なご評議を措いて、長いこと、どこへ中座しておられたか」

「や。てまえのことですか」

「ほかにそんな不嗜みの侍はこの席におらぬ」

「休息には参ったが、不嗜みではないつもりですが」

「太鼓櫓へ上がって、悠々昼寝してござったは、誰じゃ」

「頭のつかれを一洗するには、眠るにかぎると承知いたす。君前で居眠りも相成らねば、ほんの寸刻、心身をやすめていました。それもお家の為と信じて」

「ご家老」

こんどは蔵光正利が、老人ながら鋭いことばつきで、横あいから叱責を助けた。