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くろだじょすい
黒田如水
吉川 英治
「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页
平井山の秋
一
そしてまず三木城の衛星的要害をなしている神吉の城や志方の城を、たちまち陥した。
だが、別所一族が七千余人を以て守る三木城の本拠そのものは、いわゆる天嶮を占めているし、一族郎党の血にむすばれている強兵だし、加うるに、海路毛利方から新鋭の武器兵糧も充分に籠め入れてあっただけに、到底、短期間にこれを攻めつぶし得る見込みはなかった。
安土の方針も、長期を覚悟して、根気攻め兵糧攻めにするほかなし、というところにあったので、八月に入ると、信忠はあらかたの大将とその諸部隊を従えて、一応、安土へ引揚げてしまった。
「あとは、長囲になろう。お汝に委しておく」
というのが、還るに際しての、秀吉へのことばであった。
秀吉はこれにも唯々として、
「ご心配なく」
と、答えた。そして前と比較にならない寡勢をもって、三木城の正面、平井山にその長囲態勢の本営をおいた。
信忠の引揚げには、一方、もうひとつの理由があった。それは、毛利方の吉川、小早川の大軍が上月城を攻め陥すとまもなく、戦況の持久的になるのを察して、吉川元春は出雲へ、小早川隆景は安芸へ、それぞれ退いてしまったことにある。