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くろだじょすい
黒田如水
吉川 英治
「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页
三
「いわるるが如き織田家の抱負に偽りがないならば、秀吉西下の時には、織田の一翼となって働いてもよい」
とまでの口約を得て帰った。
別所家も赤松一族の庶流であり、小寺家も赤松の流れである。血に於ては近いものを持っている。いわゆる赤松氏の族流は、中国だけでも三十六家の多数に及んでいる。今日まで、口には出さなかったが、一朝大事にかかる日には、その三十六家の半数を味方に説き入れても優に新しい一勢力を喚び起すことは出来る――とは彼が夙に抱いていた画策の一つであった。
三
一面、秀吉は十月の中旬信長の命に接するや、電光石火、安土に勢揃いして、中国陣総指揮の資格を以て播州へ入った。
これは、敵毛利家を衝撃する以上、安土の宿将たちの心にも大きな波動を打たせた。
「筑前如きまだ未熟な将を中国攻略という大任に、しかも総帥としてお遣わしになった。ちと思い切ったご登用、破格過ぎはしないであろうか」
という専らな評の裡に重臣たちの含む不平はよく現われている。即ち、柴田勝家にせよ、丹羽長秀にせよ、秀吉といえば、まだ自分たちより遥か後輩の者としか見ていないのである。それが? ……という気持なのである。