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くろだじょすい
黒田如水
吉川 英治
「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页
与君一夕話
一
……何、夜食はすまして来られたといわるるか。それは重なるが、この筑前は、実はまだ半分しか食事いたしておらぬ。宵寝の一睡から醒め、飯を食うておる折へ、ちょうど御辺がお訪ねというので、食べかけたもそのまま、半分で膳を退げさせてしもうたのでござる。まずまず、話も一献あっての上のほうが弾む。――ともあれ一風呂浴びておいであれ」
更ける時刻も知らないもののように、秀吉は切にすすめて、半兵衛とともにいちど私室へかくれてしまった。小姓はうしろで湯殿への案内を促している。官兵衛はぜひなく従いて行った。彼の心にはまだ悠々と湯を楽しむほどな余裕ができていないのである。――胸中の問題をどう切り出そうか、いつ持ち出そうか。その折を見つけている間に、またこうなっては、機会を失ったような気がしないでもない。
別室にひかえていた衣笠久左衛門も、はなしの首尾はいかにと、気が気でないのであろう、官兵衛が小姓に従いてそこから長い廊下を渡って来ると、一室のうちから顔を向けて、さも心配そうに主人官兵衛の容子を見送っていた。
与君一夕話
一
人も、厩の馬も、寝しずまったころを、ここの一室では、燭の光をあらためて、さあこれからと、杯を分け持つ夜半だった。