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くろだじょすい

黒田如水

吉川 英治

「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页

青空文庫

五

「どこか。――獄屋は」

「官兵衛様のいるところは」

駆け分れた黒田武士たちは、ほとんど、それを的確につきとめ得ることの至難にみな長嘆した。奔命につかれ、気はいよいよあせるのみだった。

あせればあせるほど、かえって目標を失いやすいと沈着を努めながらも、満城の焔を見ては気が気でない。火焔は時を仮借していない。一歩を誤らんか、せっかくそこを捜しあてても、あとのまつりとなることは知れている。狂奔せずにはいられなかった。

「久左衛門、知れたか」

栗山善助と母里太兵衛のふたりが、櫓下附近で出会いがしらに訊ねた。衣笠久左衛門は渇いた声をして、

「まだ、まだ。……各※(二の字点、1-2-22)には」

と、問い返した。

「いや。こちらもまだ見当がつかぬ」

「どこぞで、池は見ないか。藤棚のある池を」

「その池を、余り目あてにし過ぎたため、ほかの曲輪の池を見て手間どったのだ。北曲輪はこの辺らしい。櫓はそこだし」

「池を探そう。建物ではわからぬ」

松林のあいだを、下へ向って駆け下りた。落葉松もそこらの灌木もみな煙をあげていた。

「――やっ。女らしいが」

栗山善助は勢いよく躓いた後、その足にかけたものを振り向いた。