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くろだじょすい

黒田如水

吉川 英治

「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页

青空文庫

名馬書写山

一

上月城は旬日を出ぬまに陥した。城主の首は姫路から安土へ送られた。秀吉は、尼子の主従を引見して、

「長年のご辛苦察し入る。が、必ずその辛苦は報われよう。きょうはまだ本懐の日ともいえぬ、唯その事の緒についたのでござるが」

と、心からいたわり、またその功をねぎらって、一夕の杯を酌み交わした。そして敵から奪った上月の城へ、尼子勝久と山中鹿之介を入れて、敵との境を守らせた。主の勝久は若年でまだ二十六歳。その下の孤忠の臣たり一代の侠骨鹿之介幸盛は、三十九歳の稜々たる骨がらの持主であった。

名馬書写山

一

秀吉はいちど安土へ凱旋した。戦捷報告をかねて、なお次の作戦段階に就いて、親しく信長の指示を仰ぐためであった。

「序戦の功としては申し分のないことだ。大儀大儀。安土で悠々と正月を迎えてゆけ」

年の暮であったので信長はそういった。そして鍾愛の乙御前の釜を与えた。

茶入れ、茶わん、茶の湯釜などを賜わることは、当時にあっては最高な勲章を授与されるのと同じであった。その名誉たる、重宝的価値ばかりでなく、信長からそれをもらうことは、

――汝もまたこれくらいな物は持って、忙中の小閑、茶などして心を養え。