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くろだじょすい
黒田如水
吉川 英治
「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页
城なき又坊
一
――まず、荒木も潰え、その荒木をすら、毛利が捨てて見殺しにしたではないかと、あきらかに利害成敗を諭して、説き伏せて参りまする」
「さあ。まる二年も、頑張った敵、そのような口舌だけではどうかな……?」
「何か、お心許なく思し召される点がありましょうか」
「あるなあ」
「どういう点が」
「また、智者が智に囚われて、伊丹の城の二の舞をせねばよいがと思う」
「ははは。その事は、誰よりもてまえが懲りていることです。このたびは、ご懸念には及びませぬ。――何となれば、老臣の後藤将監、小森与三左衛門など、すでにそれがしとの意見の一致を見、ある少数だけの犠牲を以て、全城の将士を助けたいものと、彼から希っていることでありますから」
官兵衛の言は自信にみちていた。
城なき又坊
一
次の日、官兵衛は、軍使として敵の三木城へ赴いた。
今なお足の傷手は癒えないので、歩行のときは甚だしい跛行をひく。(これは痼疾となって生涯の不具となった)――で、彼は、栗山善助に命じて、軽敏に乗用できる陣輿を製らせておいた。その日はそれに乗って、敵中へ使いしたのである。
彼の陣輿は、彼の工夫を多分に取り入れた物だった。