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くろだじょすい

黒田如水

吉川 英治

「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页

青空文庫

信念一路

一

と、官兵衛はあたりをちょっと見て、

「およろこび下さい。岐阜へ出向くことになりました」

「岐阜へ。ふうむ……。主家のお使いか」

「さようです」

「めでたい。それはよかった。わかった、わかった」

「多言を申しませぬが、どうぞご推量を。いずれ無事帰国したらゆるりとお目にかかりましょう」

「道々。気をつけて行かれよ」

官兵衛は、師のことばへ、耳を向けただけで、御着の方をふり顧っていた。彼に似気なく、何かただならない顔色を現わしている。

円満坊もはっと気づいたらしい。彼とともに、同じ方へ眸をやった。見れば、乾ききった白い道を、ふたりの武士が宙を飛んでこなたへ駆けて来るのである。股立取って、ひとりは手槍を抱え、ひとりは手をあげて、何か此方へ大声で呼びかけて来る。――官兵衛はじっとしたまま眸を離たず待っていた。

信念一路

一

それは母里太兵衛と、栗山善助とよぶ、若い郎党だった。

この二人は、小寺家の直臣ではない。いわば陪臣にはなるが、官兵衛の父宗円が子飼から養って来た者である。数年前、官兵衛がその英才を愛されて、小寺政職から強って御着の家老職に望まれて行った際、子を思う宗円が、