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くろだじょすい

黒田如水

吉川 英治

「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页

青空文庫

菩提山の子

一

美濃岩村の菩提山の城へついた。

山村の小城にすぎない。しかし久しぶりに帰って来た主を迎えて、家中は城門に立って出迎えた。半兵衛は城へ入るとすぐ老臣にたずねた。

「黒田どのの質子はかわりないか。この冬は風邪もひかずに過したか」

老臣は縁先から城の平庭を見まわし、ずっと奥の山芝の黄いろく見えるあたりを指さした。

「あれ、ご覧あそばしませ、今日もご家中の児等をあつめてあのとおり元気に、暴れておいでになりまする」

「どれ、どれ……」

半兵衛も褥を起ってそこへ出た。彼は安土のいいつけを胸に持って来た人だった。その眸には蔽いきれない深い傷心がひそんでいた。

菩提山の子

一

腕白は家中にも多い。けれど父母がありながら父母の膝下を遠く離れて、他国の質子となっている子は、その仲間では松千代ひとりであった。

「……あ。小父様」

大勢の子とともに、遊戯に夢中になっていた松千代は、そのうちにふと、本丸の縁に立っている半兵衛重治のすがたを見つけ、見るやいな友達を捨てて此方へ駆け出して来た。

「――小父様。お帰りあそばせ」

「おう、於松。元気だな」

「長いこと、小父様がちっともお見えにならないので、とても淋しかった。