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くろだじょすい

黒田如水

吉川 英治

「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页

青空文庫

先駆の一帆

一

と、与次右衛門は外へ出て行った。

先駆の一帆

一

間もなく、町は灯ともし頃となった。暮れるとともに、路地の中まで、海辺らしい風が冷やかに流れてくる。

官兵衛が湯漬を食べ終った頃、与次右衛門は帰って来て、

「ちとご不便でございましょうが、唖で極く正直者という船頭に金を与え、雁の松の下へ、舟を廻しておくように申しつけて参りました。……が、きょうの夕方頃、毛利方のお船手が十人余り兵糧船から上陸って、三木城のお侍衆と一緒についそこの遊女町で飲んでおるということでございますし、そのほかだいぶ見かけない侍衆が町をあるいておる様子ゆえ、お出ましには十分、お気をつけ遊ばさないといけません」

と、彼の戒心をうながした。

官兵衛は、うなずいて、

「いまも飯をたべながら考えてみたが、この姿のままでは、海上はともかく、岐阜までは所詮、難なく歩くのは難しい気がする。ちょうどこの家からは、諸国へ目薬売りの行商人が出ておるから、その旅商いの身支度を一揃い、わしに貸してくれんか。――すぐここから身装を変えて出かけよう」と、いった。

それはよいお考えつきと、与次右衛門も同意はしたが、さて、売子の着るうす汚い肌着や脚絆などを取って官兵衛が着替えているのを見ると、前途の危険やらその覚悟の心根が思いやられて、この人を幼い時から手塩にかけた与次右衛門として