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くろだじょすい

黒田如水

吉川 英治

「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页

青空文庫

四

明智光秀なども、意外となした一人らしい。中国発向の場合には、或いは自分に、という期待はいわず語らず自負していたふうがある。殊に山陰方面の方策については、度々、献言も試み、尼子一族との間にも介在していた関係上、それは決して、彼の自惚れだけのものではない。

だが、誰よりも失望し、また不愉快に思ったらしいのは、伊丹城にある――いく久しく中国と上方との重要な境界に位置もしまた働きもしていた――荒木摂津守村重であったろう。これは当然、前々から、

「俺が」と、自負満々たる者だったのである。秀吉の率いてゆく大軍が、摂津を通過するのを見て内心穏やかならぬものがあったことは争えない。

四

小寺家にとってはいいきれないが、黒田官兵衛にとっては、秀吉の軍隊こそ、正に待望の兵である。

かねて、信長と約したように、一家の住居としていた姫路の城は、挙げてこれを、「織田軍の本営に」と提供を申し出て、秀吉とその軍を迎え入れて、家族たちは、隅の一曲輪に移してしまった。

秀吉は、姫路城に入って、ここから、一応形勢を、現地的観察の下に見とどけると、

――播磨一円の平定は、おそらく来月中旬を出でず片づきましょう。