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くろだじょすい
黒田如水
吉川 英治
「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页
道
一
三好氏は紀伊、伊賀、阿波、讃岐などに、公方の与力と旧勢力をもっている点で無視できないが、これとて要するに悉く頭の古い過去の人々であるばかりで、世を紊し民を塗炭に苦しめた罪は、決して軽からぬものでおざろう。何よりは、また彼等はすべて民心の信望から見かぎられている」
と、ことばつよく断じ、
「こう観てくれば、信長以外に、ご当家のご運を賭し、またわれら侍の一死を託す者は他にないことは余りにも明白でありましょう。われらの感じるところ、また衆民の共感するところで、信長出でて初めて万民は曙光を知ったというも過言でありますまい。さきにいったような志をもって衆民の信頼をつよくつなぎ得ている者の理想が、この時代に行われないはずはありませぬ。まして天下いま他に恃む何ものとてない時代においてをやであります」
さしもの広い部屋も、この中の惰気も、また自我も争気も、しばらくは一掃されて、彼ひとりの声しかそこには聞えなかった。
道
一
その日の午過ぎである。まだ暑い盛り。
播州の一隅にすぎぬ田舎城といえ、年まだ三十という若い家老は、その健康と、赭ら顔に笑靨を持って、ひとりこつこつと馬を姫路の方へ歩ませていた。