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くろだじょすい

黒田如水

吉川 英治

「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页

青空文庫

二

そして、それらの人々に依って、官兵衛救出の決死組が結盟された。

熊野牛王の誓紙には、日本国中の大小神祇、八幡大菩薩、愛宕山権現、ところの氏神にも、違背あれば御罰を蒙らんと明記してある。――その誓紙の下に血判署名したその折の義臣の名を後に見るならば、

母里与三兵衛―喜多村六兵衛勝吉―衣笠久左衛門―長田三助―藤田甚兵衛―三原右助、同隼人―小川与三左衛門―栗山善助―後藤右衛門―宮田治兵衛―母里太兵衛

などの面々があり、「御本丸様」と宛てて認められた月日には、天正六年十一月五日という日付が見える。

二

主君救出決死組の盟とその連判は即座になされたが、そう方針が一決するまでには、家中の苦悶と迷いも一方でなく、紛々たる議論もあったし玉砕的な行動に出でんとする過激な策も真剣に考えられたのであった。

「――村重に迫って官兵衛様のお救いを迫ろうとすれば、どうしても村重に与さなければならない。さすれば、信長公の許にさしあげてある質子松千代様のお命は当然ないものと覚悟しなければ相成らぬ。――というて、松千代様のお命を護らんがために、一党いよいよ織田方に異心なきを示すならば、村重の毒手に罹って獄中にある官兵衛様のお命は到底これを保し難いであろう」