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くろだじょすい

黒田如水

吉川 英治

「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页

青空文庫

四

各※(二の字点、1-2-22)急いで膝を正し、また襟元をあらためた。播州の一隅から出ない地方城主の家中でも、久しいあいだの室町幕府の礼儀式典にやかましい風習だけはよく身に沁みている。こうすがたを揃えて厳粛に回れば、さすがにみな頼みがいある侍に見えた。

四

官兵衛はこのときここで何を説いたかといえば、もちろん年来の主張の織田支持を力説したのである。天下はやがて必ず織田軍の旗によって風靡される。たとえ毛利家がいかに強大でも、公方の残存勢力を擁する三好党がどんなに抗戦してみても、織田信長のまえには、到底、焼かれる燎原の草でしかないことを、その信念で繰返したにとどまる。

だが、それは前提であって、彼が改まってこの日いおうとしたのは、

――なぜ、そうあらねばならないかの問題だった。

「思うに、この騒暗の地上に、自然が信長を生れしめたのは、いわゆる天意ともいうものであって人意人工ではない。いまこの人がなければ、誰がこの抑えてのない衆愚と衆暴の乱脈時代を――我意と我意の際限もない同胞同士の闘争を一応ひとつものにまとめてゆけようか。そのためにはまた誰がご衰微を極めている皇室を以てこの国に適したすがたとして、衆民が和楽してゆけるような大策へ現状の乱れを向けてゆけるだろうか。