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くろだじょすい
黒田如水
吉川 英治
「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页
友の情け
一
しかもその一本の悩みを抜き去るためには、それに連なる志方、神吉、高砂、野口、淡河、端谷などの衛星的な小城をまず一塁一塁陥し入れてからでなければ、敵の本拠たる歯根を揺がすことは出来ないからである。
書写山を本営とする秀吉の戦法は、いわゆる定石どおりにその外郭の敵を一城ずつ攻めて行った。野口城を陥し、端谷城を奪り、順次、神吉の神吉長則や、志方の櫛橋治家などの塁も衝き、別所一族の領土とする広汎な地域にわたって、放火、掃蕩、迫撃の手を強めていた。
が、いかに秀吉の左右に、軍師竹中半兵衛と智襄黒田官兵衛がともに扶けていても、一万に足らない小勢では、彼の地の利に対して、短兵急に効を挙げることは覚つかない。
(事態は重大、急遽、ご援軍の西下を仰ぐ)
秀吉は疾く、安土の信長へ向って、こう早飛脚を立てていた。そして一面には、士気を疲らせないために、時折、軍馬を休め、浩然の気を養わせて、長期戦を期していた。
そうした休戦日のある折だった。黒田官兵衛の陣所へ、半兵衛が遊びに来た。陣羽織に竹の杖を持ち、洒たる姿で、
「お在でか」
と、陣屋の内を覗いた。
書写山の上には僧房が多い。