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くろだじょすい
黒田如水
吉川 英治
「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页
二
だが、そうしてようやく内治が調ったと思うと、こんどは国外からの圧迫がひしひしと、この一小国にも、旗幟の鮮明を促して来た。それもここ二、三年は何とか日和見的態度で糊塗して来たが、いまや急なる風雲はもう一日もそれをゆるさなくなって来たのであった。
二
「於松。……おとなしゅう待っておれよ。父はこれから都を経て、岐阜という国までお使いに行ってくる。よいか。わかったか」
官兵衛は、わが子の頭を、いくたびも撫でた。
一子松千代は八歳であった。
いまの妻と結婚したその年にもう生した子であった。可愛くてたまらないらしい。
「はい、はい」
松千代は、父の面を見ながら、はっきりと頷いた。遠国の旅ということも、子ども心には、単にそれだけのこととしか感じられないらしい。
「松千代も、お父上とご一しょに、岐阜とやらへ、行ってみたい」
母のそばへ戻ると、松千代は、そういって、美しい母の手を引っぱった。
さっきから黙然と、官兵衛夫婦とその孫をながめていた宗円は、生木を裂くような酷さを胸のそこに嚥みながら、わざと可笑しくもない顔していった。
「官兵衛官兵衛。さむらいたるものが何事だ。