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くろだじょすい
黒田如水
吉川 英治
「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页
三
もちろん相互の国交はとうに断絶しており、関所の要害は海路まで厳密を極めている。
とりわけ両勢力の中間にある群小国家ともみなせる多くの小城の持主や地方豪族の切りくずしには、序戦のまえの予備戦としてあらゆる手段が尽されているらしいのである。たとえその中に巻込まれている一豪族でも、すぐ隣村の豪族は毛利加担か織田の味方か、またわずか河一つ隔てた小城の性格でも、いったいその何れに組みそうとしている肚なのか、ほとんど、表面的なうごきだけでは真を卜することは出来ないような情勢にある。
たとえば、これは大藩だが、この播州御着からはすぐ隣り国の浮田家にしてからが、いまのところでは、毛利方と観られているが果たして不変なものかどうか、密偵の情報などに依ると、甚だ疑わしいものが感じられるのだった。
そこで、こう見廻せば見廻すほど、この地方の城主たちは、まったく帰するところに迷っているというのが、まず誤りない実状だったのである。ひとりこの御着城と小寺政職だけのうろたえではなかった。
三
――だから私が、夙くからいわないことではないでしょう。どうです。
ことしまだ三十歳になったばかりの若い家老職、黒田官兵衛(当時まだ主家の姓をうけて小寺氏を称するも紛らわしきためここにはその本姓を用う)――彼だけはゆうべからこの席にいても至って超然たる