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くろだじょすい
黒田如水
吉川 英治
「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页
二
「みなも、寝るがよい」
そこのふたりへも、次の間にいる母里太兵衛や衣笠久左衛門へもいって、やがて枕元の燈も消させた。
二
十日ほども経つと、官兵衛は部屋から浴槽まで独りで通えるようになった。
「中国へ行きたい。一刻も早く、三木城の攻略に加わりたい」
すこし体がきき出すと、官兵衛はしきりにいって、宥める家臣たちを手こずらせた。
信長からは幾度も見舞があった。使者はここへ臨むたびに、
「充分にお体を癒し、ご本復の上も、姫路へもどって悠々休養されるがよい」
と、浅からざる恩命と、種々な贈物とを齎した。
官兵衛からは、希望として、
「羽柴殿にはまだ今日も三木城を包囲長攻のまま、長陣の苦戦もただならぬものある由。病後恢復の上は、何とぞ中国の戦場に参陣の儀、従来の如くなるべしと、ご許容をおねがい申しあげる」
と、信長への取次を仰いだ。
もちろんその儀は仔細なしという事ではあったが、呉々も無理をせぬようにと、重ねて信長は見舞をよこした。
「もう大丈夫。馬にも乗れる。明日はこの宿を立つぞ」
二十日目である。官兵衛はついにいい出して、肯かない容子を示した。ぜひなく家臣たちは、宿の亭主に告げて、