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くろだじょすい
黒田如水
吉川 英治
「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页
初対面
一
秀吉の側に仕えている小姓たちであろう。中には、きょうの昼、久左衛門に槍を向けた若者の顔もあったように思われた。いずれにせよ、召使たちまでがみな客にたいして感じがよい。主人の疲れを庇うにしてもわざとらしからず、やがて一室に客を請じてからも、家中の者の醸している明るさが、そこの灯よりもはるかに明るく、そして一つの羽柴家の家風というものをつつみなく顕わしていた。
初対面
一
供の久左衛門は別室にひかえ、官兵衛一名だけ廊を渡って、奥の客院へ導かれた。
白襖をめぐらした約二十畳ほどの内に、三つの燭が照り映えていた。彼のすがたと入れちがいに綺羅やかな小姓達が連なって膳や銚子を退げて行った。この深夜というのに、秀吉はつい今し方眼をさまして、食事もたった今すんだところらしい。以て彼の日常がいかに多忙で朝夕の私生活などは時間かまわぬ行き当りばったりで押し通しているかが窺われるのであった。
「やあ、これは――」と、客を見るなり褥から起って迎えたのがその人だった。官兵衛が坐らないうちに、ずかずか歩み寄って来て、
「ようお訪ね下された。儂にとっては思いがけぬ珍客。まずまず……」