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くろだじょすい
黒田如水
吉川 英治
「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页
二
という者もあった。
いずれにせよ、この戦国において、この事ほど武辺の話題になったことはない。ただ惜しむらくは、竹中半兵衛ほどな人物に、なぜか天は逞しい肉体を与えなかった。弱冠から多病の質である。それだけが惜しまれてもいたし、秀吉もまた、破れ易い名器を座右に置いているように、いつも一方ならぬ気遣いをしているようであった。
中国の僻地にいるかなしさには、黒田官兵衛も疾く噂は聞いていたが、およそのことを想像して、忘れるともなく忘れていた。――今、あらゆる予備的な世評をいちどに思い出して、厳然と、その存在と人物の重さに、襟を正さしめられたのは、まさに今夜その人と間近に対い合ったときからであった。
二
「お風呂のしたくが調いましたが」
と、小姓が告げて来たのを機に、
「や、そうか。……どうだ官兵衛。小姓が案内するによって、一浴び湯をつこうては参らぬか」
と、秀吉は来意も聞いていないのに、逗留客でもねぎらうように独り合点してからすすめた。
「何せい、夏の馳走は、風呂よりましはない。汗をながして、浴衣になられたがいい。……夜は短いが、そのうえで、部屋をあらためて、食事を共にいたそう。