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くろだじょすい
黒田如水
吉川 英治
「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页
三
また、まだうら若い彼の妻が詠み遺した一首には、
もろともに消えはつるこそうれしけれおくれ先だつ習ひなる世を
こういうとき女性の覚悟が男子を凌ぐような例はままある。別所賀相の妻もそうした潔さをこの時に示した一人だった。彼女は良人の醜い死際を知ってもみだれず騒がず、小三郎夫妻の死を見とどけてから、男女三人の幼な子を膝に寄せると、目をふさいで母の手で刃を加え、後、われとわが喉を突いて自害した。そしてその傍らに書き遺した短冊には、
のちの世の道もまよはじいとし子を我が身にそへて行くすゑの空
三
秀吉は即日、一書を封じて、早馬に託した。三木城陥落を、信長の許へ急報したものであることは言を俟たない。
さきには、荒木を征伐し、いままたこの戦果をうけ取ったので、安土は凱歌に沸いた。「信長記」にはその状況を記してこういっている。
別所三人ノ頸、安土へ進上、御敵タルモノハ、悉ク御存分ニ属シ、御威光ナカナカアゲテ数フベカラズ。併セテ筑前一身ノ覚悟ヲ以テ、大敵ヲカクノゴトク退治ナサレ候ノ事、武勇トイヒ、調略トイヒ、弓矢ノ面目之ニ過グベカラズ。
しかし、世人の眼は、信長のなした荒木村重の始末と、秀吉がなした三木城の結末とを、必ずしも、同じに視ていなかった。